タンソンニャット国際空港:第3ターミナル開業と新シャトルバスサービスに関する包括的分析

タンソンニャット国際空港 第3ターミナルの詳細情報
運用開始の経緯と背景
ホーチミン市のタンソンニャット国際空港における第3ターミナル(T3)は、長年にわたる空港の混雑問題への対応策として計画され、建設が進められてきました。具体的な建設開始は2022年12月であり、約11兆ベトナムドン(当時のレートで約4億3,100万米ドルから4億4,500万米ドルに相当)という大規模な投資が行われました。そして、2025年4月17日に最初のフライト(バンメトート行き)を受け入れ、同月末から5月初旬にかけて段階的に本格的な運用が開始されました。この新ターミナルの建設は、単なる機能拡張に留まらず、ベトナム南部の経済成長と航空需要の増大に対応するための国家的なプロジェクトとしての側面も持っています。
T3建設が急務となった最大の理由は、タンソンニャット国際空港が設計容量を大幅に超える旅客数を捌き続けてきたことにあります。既存のターミナル1(T1、国内線)とターミナル2(T2、国際線)を合わせた設計上の年間旅客処理能力は、約2,800万人から3,000万人程度とされていました。しかし、実際には新型コロナウイルス感染症パンデミック前のピーク時には年間4,000万人以上の旅客が利用しており、特に国内線ターミナルであるT1(年間処理能力約1,500万人)では、出発・到着ラッシュ時を中心に深刻な混雑が発生し、旅客の利便性や定時運航に影響を与える状況が常態化していました。手荷物受取所の混雑、チェックインカウンター前の長蛇の列、保安検査場の待機時間増加などが具体的な問題として挙げられます。T3の建設は、この過密状態を抜本的に解消し、今後も増加が見込まれる国内線の航空需要を着実に受け入れるための、喫緊の課題解決策として位置づけられていました。
旅客処理能力と施設規模
新設されたT3ターミナルは、国内線専用ターミナルとして、年間2,000万人の旅客を処理できる能力を持つように設計されています。これは、既存のT1ターミナルの年間処理能力(約1,500万人)を上回る規模であり、国内線のキャパシティを大幅に増強するものです。ピーク時には1時間あたり最大7,000人の旅客に対応可能とされており、これにより繁忙期の混雑緩和が期待されます。T3の稼働により、タンソンニャット国際空港全体の年間総旅客処理能力は、T1、T2と合わせて約5,000万人にまで引き上げられました。これは、空港全体のキャパシティを約1.7倍に増強することを意味し、ベトナム南部の航空輸送におけるボトルネック解消に大きく貢献します。
物理的な規模においても、T3は印象的なものとなっています。総床面積は112,500平方メートルに及び、これはベトナム国内で最大の国内線旅客ターミナルとなります。建物は地下1階、地上4階建ての構造となっており、広々とした空間を提供します。地下階は主に運営・技術関連施設、地上階は到着ロビーや手荷物受取所、2階は出発ロビーとチェックインカウンター、3階が出発待合室と搭乗ゲート、4階には航空会社ラウンジや商業施設などが配置される構成が一般的ですが、T3の具体的なフロア構成に関する詳細情報は現時点では限定的です。しかし、その広大な床面積は、旅客が快適に過ごせる空間と、効率的な旅客フローを実現するための基盤となるでしょう。
第3ターミナルを使用する航空会社
T3ターミナルは、主に国内線のハブとして機能することを目的として建設されました。2025年4月下旬から5月初旬にかけて、ベトナム航空(Vietnam Airlines, VN)の国内線の大部分が、従来のT1ターミナルから新しいT3ターミナルへと移管されました。これにより、ベトナム航空の国内線を利用する旅客の多くは、出発・到着ともにT3を利用することになります。ただし、例外として、ベトナム航空が運航するホーチミン市発のカマウ(Ca Mau)、コンダオ(Con Dao)、ラックザー(Rach Gia)行きの3路線については、使用機材等の理由から、引き続きT1ターミナルでの運航となります。これらの路線を利用する旅客は注意が必要です。
一方、ベトナム最大手のLCC(格安航空会社)であるベトジェットエア(Vietjet Air, VJ)のT3への移管状況については、情報が錯綜しており、利用者は特に注意が必要です。当初の計画や一部報道では、ベトナム航空とほぼ同時期にベトジェットエアの国内線もT3に移管される予定であると伝えられていました。しかし、2025年4月下旬時点でのベトナム民間航空局(CAAV)による公式発表では、ベトジェットエアはまだT3での運航を開始しておらず、引き続きT1を使用していると明記されていました。一方で、2025年5月5日からベトジェットエアもT3での運航を開始した、あるいは順次移管を開始するという情報も見られます。このように情報が不確定な状況であるため、ベトジェットエアを利用する旅客は、搭乗前に必ず、自身の航空券(eチケット)、航空会社の公式ウェブサイト、またはモバイルアプリで、利用するターミナル(T1かT3か)を再確認することが極めて重要です。ターミナルを間違えると、シャトルバスでの移動が必要となり、時間に余裕がない場合は乗り遅れるリスクがあります。
その他の国内線航空会社については、パシフィック航空(Pacific Airlines, BL)とベトナムエアサービス(VASCO, 0V)は、引き続きT1ターミナルで運航を継続します。また、バンブーエアウェイズ(Bamboo Airways)やベトラベル航空(Vietravel Airlines)も、現時点ではT1に残るとされています。国際線については、従来通りT2ターミナルが使用されます。
まとめると、以下のようになります(2025年5月2日時点の推定情報)。
- T1(国内線): ベトナム航空の一部路線(カマウ、コンダオ、ラックザー行き)、パシフィック航空、VASCO、バンブーエアウェイズ、ベトラベル航空、ベトジェットエア(要確認)
- T2(国際線): 全ての国際線
- T3(国内線): ベトナム航空の国内線(上記3路線を除く)、ベトジェットエア(要確認)
繰り返しになりますが、特にベトジェットエア利用者は、必ず事前に最新の情報を確認してください。
主な特徴と導入された設備
T3ターミナルは、機能性だけでなく、デザイン性にも配慮されています。最も特徴的なのは、ベトナムの伝統的な民族衣装である「アオザイ」の優美なシルエットからインスピレーションを得た、曲線的で流れるような屋根のデザインです。このデザインは、ベトナム文化への敬意を示すと同時に、ターミナル内部へ自然光を効果的に取り入れるための工夫でもあり、明るく開放的な空間を演出しています。
旅客のスムーズな手続きと快適な利用体験を実現するため、T3には最新かつ多数の設備が導入されています。チェックイン関連では、従来型の有人チェックインカウンターが90ヶ所設置されているほか、旅客自身が手荷物を預け入れることができる自動手荷物預け機(Self Bag Drop, SBD)が20台、そして搭乗手続きをセルフサービスで行えるセルフチェックイン機(KIOSK)が42台導入されています。これにより、チェックイン方法の選択肢が増え、混雑時の手続き時間短縮が期待されます。
保安検査についても、旅客用の保安検査レーンが25ヶ所設けられており、十分な処理能力を確保しています。出発ゲートは合計27ヶ所あり、その内訳は、旅客が航空機に直接搭乗できるボーディングブリッジ(搭乗橋)が13基、バスで航空機まで移動する方式のバスゲートが14ヶ所となっています。これにより、様々なサイズの航空機に柔軟に対応可能です。
さらに、T3では最新技術の活用も積極的に進められています。特筆すべきは、ベトナム政府が推進する電子身分証明書アプリ「VNeID」を利用した顔認証システムの導入です。このシステムにより、対応する旅客は保安検査場や搭乗ゲートで顔認証による通過が可能となり、手続きの迅速化、セキュリティの強化、そして搭乗券や身分証明書の提示が不要になることによるペーパーレス化に貢献します。このようなスマートチェックイン技術の導入は、現代的な空港としてのT3の地位を高めるものです。
ターミナルビルに隣接して、大規模な立体駐車場も建設されました。この施設は、単なる駐車スペースの提供に留まらず、非航空系サービス、すなわちレストラン、カフェ、ショップなどの商業施設や、オフィススペースなどを統合した複合施設としての機能も持っています。これにより、空港利用者の利便性向上や、空港周辺エリアの活性化が期待されます。ただし、2025年5月現在、T3ターミナル内の具体的なレストラン、ショップ、免税店、航空会社ラウンジ(ベトナム航空のロータスラウンジなど)の詳細なリストや営業状況に関する公式情報はまだ十分に提供されていません。空港全体としては多様なアメニティが存在しますが、T3固有の施設については、今後の情報公開を待つ必要があります。これらの充実した設備と先進技術の導入は、T3が単に旅客処理能力を拡大するだけでなく、旅客体験の質的な向上と運営効率化を目指して設計された、現代的な空港ターミナルであることを明確に示しています。
新設されたターミナル間移動サービス
T3ターミナルの運用開始に伴い、既存のT1(国内線)およびT2(国際線)との間で旅客が円滑に移動できるよう、新たに2種類の無料シャトルバスサービスが導入されました。これらのサービスは、運行ルート、対象旅客、目的が異なるため、利用者は自身の状況(乗り継ぎの有無、所持している航空券の種類など)に応じて、適切なシャトルバスを選択する必要があります。
エアサイド無料シャトルバス:T3発 T1行き
目的と対象旅客
このシャトルバスサービスは、空港の制限区域内(エアサイド、搭乗ゲートや駐機場があるエリア)を走行するもので、特定の乗り継ぎ旅客専用に提供されます。主な目的は、T3に到着した国内線旅客が、その後T1(国内線)またはT2(国際線)から出発する便にスムーズに乗り継げるように支援することです。利用対象となるのは、T3に到着し、かつT1またはT2から出発する乗り継ぎ便のチェックインが完了しており、有効な搭乗券を所持している旅客です。特に、国内線ハブ機能の一部をT3に移管したベトナム航空の乗り継ぎ客が主な利用者として想定されています。例えば、ハノイからベトナム航空でT3に到着し、その後カマウ行きの便(T1発)や国際線(T2発)に乗り継ぐ場合などが該当します。乗り継ぎ便の搭乗券を持っていない旅客や、最終目的地がホーチミン市である旅客は利用できません。
運行詳細
- ルート: このシャトルバスは、空港の制限区域内、つまり航空機が走行する駐機場エリアを走行します。具体的には、T3ターミナルの乗り継ぎホール付近から出発し、T1ターミナルの制限区域内にあるA2ゲート付近へ直行します。一般道やターミナル外の道路を経由しないため、ホーチミン市内で頻繁に発生する交通渋滞の影響を受けることなく、迅速かつ確実なターミナル間移動が可能です。所要時間は比較的短いと考えられますが、具体的な時間は公表されていません。
- 運行方向: 重要な点として、このエアサイドシャトルサービスは、現時点(2025年5月2日)ではT3からT1への片道運行のみとなっています。T1からT3へ、あるいはT1/T2とT3間を双方向に結ぶエアサイドシャトルに関する公式情報はありません。これは、現状ではT3到着後の乗り継ぎ利便性確保が優先されていることを示唆しています。T1に到着してT3発の便に乗り継ぐ場合は、後述するランドサイドシャトルを利用する必要があります。
- 運行時間: 毎日午前7時00分から翌日の午前3時00分まで運行されています。これは、T3を発着する国内線の運航時間帯の大部分をカバーしています。
- 運行間隔: 約20分間隔で運行されています。ただし、フライトの到着状況などに応じて多少変動する可能性も考えられます。
乗り継ぎ手荷物の取り扱い
このエアサイドシャトルバスの利用対象となる乗り継ぎ旅客の受託手荷物(預け入れ荷物)は、通常、航空会社によって最終目的地まで自動的に積み替えられます(スルーバゲージ)。したがって、旅客はT3で一旦手荷物を受け取り、再度T1またはT2で預け入れる必要はありません。これにより、乗り継ぎプロセスが大幅に簡素化され、時間の節約になります。ただし、予約クラスや航空会社の規定によってはスルーバゲージとならない場合も考えられるため、最初の出発地でのチェックイン時に、手荷物が最終目的地までスルーされるかを確認することが推奨されます。
このエアサイドシャトルは、T3開業に伴うターミナル機能分散化への対応策として、特にベトナム航空を利用する乗り継ぎ客の利便性を維持するために不可欠なサービスと言えます。片道運行である点や、利用条件(搭乗券所持)には注意が必要です。
ランドサイド無料シャトルバス:T1・T2・T3接続
目的と対象旅客
こちらは、空港の一般区域(ランドサイド、チェックインカウンターや到着ロビーがあるエリア)を走行する無料シャトルバスサービスです。主な目的は、T1、T2、T3の各ターミナル間を移動する必要がある全ての旅客が利用できるようにすることです。エアサイドシャトルのような利用制限はなく、誰でも無料で乗車できます。具体的な利用対象者としては、以下のようなケースが考えられます。
- 出発旅客:例えば、誤ってT1に行ってしまったが、実際にはT3から出発する便だった場合。
- 到着旅客:例えば、T3に到着後、T1やT2から出ている公共バスやタクシーを利用したい場合、またはT1/T2にある施設を利用したい場合。
- ターミナルを間違えた旅客:出発・到着に関わらず、利用ターミナルを間違えた場合。
- 乗り継ぎ旅客:エアサイドシャトルの対象外となる乗り継ぎ旅客。例えば、異なる航空会社間での乗り継ぎで、一旦到着ターミナルで入国・手荷物受取が必要な場合や、T1に到着してT3発の便に乗り継ぐ場合など。
- 空港訪問者:旅客だけでなく、出迎えや見送りの人、空港内の店舗やオフィスで働く従業員なども利用可能です。
運行詳細
- ルート: このシャトルバスは、空港敷地内の一般道路を走行し、T1、T2、T3の各ターミナルビルを結びます。具体的なルートは公表されていませんが、一般的にはT2 → T1 → T3 → T2 … といった循環ルートで運行されると考えられます。各ターミナル間の移動距離や所要時間は、ルートや交通状況によって変動します。
- 運行時間: 公式情報によると、毎日午前4時30分から翌日の午前0時30分まで運行されています。これは、空港が運用されているほぼ全ての時間帯をカバーしています。(一部情報では午前6時から翌午前2時までという記載も見られましたが、ベトナム民間航空局などの情報に基づき、前者がより確実と考えられます)。
- 運行間隔: 約15分から20分間隔で運行されるとされています。(一部情報では10分~20分間隔とも)。ただし、後述する交通状況の影響を受ける可能性があります。
乗降場所
各ターミナルには、このランドサイドシャトルバスの専用乗降場所が設けられています。旅客は指定された場所で待機し、バスに乗降する必要があります。
- T1(国内線ターミナル): 到着階(Ground Floor)外のBレーン、柱番号 B17 から B20 の間
- T2(国際線ターミナル): 到着階(Ground Floor)外のBレーン、柱番号 B16 から B15 の間
- T3(新国内線ターミナル): 1階(地上階、到着階に相当)外、柱番号 A17 から A20 の間
これらの乗降場所は、各ターミナルのタクシー乗り場やバス乗り場に近いエリアに設定されていると考えられます。案内表示を確認して、正しい場所で待つようにしてください。
利用上の注意点
- 交通渋滞の影響: このシャトルバスは一般区域の道路を走行するため、特に朝夕の通勤・帰宅ラッシュアワーや、フライトが集中する時間帯には、空港周辺道路やターミナル間のアクセス道路の交通渋滞により、遅延が発生する可能性があります。ターミナル間移動にこのバスを利用する場合は、渋滞の可能性を考慮し、時間に十分な余裕を持つことが非常に重要です。特に乗り継ぎ時間が短い場合は注意が必要です。
- 手荷物の管理: エアサイドシャトルとは異なり、ランドサイドシャトルでは旅客自身が自分の手荷物を管理する必要があります。大きなスーツケースなどを持っている場合は、バスへの持ち込みや車内での保管に配慮が必要です。
- 遺失物: 万が一、シャトルバス内に忘れ物をした場合の問い合わせ先として、電話番号「1900 866663」が案内されています。
このランドサイドシャトルバスは、全ての空港利用者がターミナル間を移動するための基本的なインフラとして機能し、エアサイドシャトルを補完する重要な役割を担っています。ただし、所要時間が交通状況に左右される点には留意が必要です。
エアサイドとランドサイドシャトルの比較
2種類の無料シャトルバスサービスの特徴と違いを明確にするため、以下の表にまとめました。利用者はこの比較表を参考に、自身の状況に合った適切なサービスを選択してください。
特徴 | エアサイドシャトル (T3 → T1) | ランドサイドシャトル (T1-T2-T3接続) |
---|---|---|
運行エリア | 制限区域内(エアサイド、駐機場) | 一般区域(ランドサイド、空港敷地内道路) |
運行方向 | 片道(T3 から T1 のみ) | 循環(T1, T2, T3間を結ぶ) |
対象旅客 | 特定の乗り継ぎ旅客(T3到着後、T1/T2から出発する便の搭乗券を所持) | 全ての旅客(出発、到着、乗り継ぎ、訪問者など制限なし) |
運行時間 | 7:00 – 翌3:00 | 4:30 – 翌0:30 (公式情報に基づく) |
運行間隔 | 約20分 | 約15分 – 20分 (公式情報に基づく) |
手荷物の取り扱い | 航空会社が最終目的地まで自動で積み替え(通常) | 旅客自身が管理し、バスに持ち込む |
主な目的 | T3到着後のスムーズな乗り継ぎ支援(特にベトナム航空) | 全ての旅客のための一般的なターミナル間移動手段の提供 |
所要時間に影響する要因 | (特になし、比較的安定) | 交通渋滞による遅延の可能性あり |
タンソンニャット国際空港利用のポイント:旅客向け実用情報
第3ターミナル(T3)の開業と、それに伴う航空会社の運航ターミナルの変更、そして新しいシャトルバスシステムの導入により、タンソンニャット国際空港を利用する際には、以前にも増して事前の情報確認と、空港内での移動時間を含めた余裕を持った行動計画が重要になります。以下に、旅客がスムーズに空港を利用するための実用的な情報をまとめます。
利用ターミナルの確認方法
空港へ向かう前に、ご自身が利用するフライトがどのターミナル(T1, T2, または T3)から出発するのか、あるいはどのターミナルに到着するのかを必ず確認してください。これは、空港での混乱を避け、乗り遅れのリスクを最小限にするための最も基本的なステップです。確認は以下の方法で行うことができます。
- 航空券(eチケット)の記載内容: 通常、eチケットには出発・到着ターミナル番号が明記されています。予約後に送られてくるPDFファイルなどを確認してください。
- 航空会社の予約確認メール: 航空会社から送られてくる予約確認メールにも、ターミナル情報が含まれている場合があります。
- 航空会社の公式ウェブサイトまたはモバイルアプリ: 予約管理ページやフライト状況確認ページで、最新のターミナル情報を確認できます。モバイルアプリでは、プッシュ通知でターミナル変更などの情報が送られてくることもあります。これが最も確実な方法の一つです。
- 搭乗券: オンラインチェックインを済ませている場合は、発行されたモバイル搭乗券や印刷した搭乗券にターミナル番号と搭乗ゲート番号が記載されています。
特に、前述の通り、ベトナム航空の一部の国内線(カマウ、コンダオ、ラックザー行きはT1)や、ベトジェットエアの利用ターミナル(T1かT3か、最新情報の確認が必須)については、他の路線や航空会社と異なる場合があるため、特に注意深く確認する必要があります。万が一ターミナルを間違えてしまった場合、ランドサイドシャトルバスでの移動が必要となり、予想以上の時間がかかる可能性があります。
推奨される空港到着時間と乗り継ぎ時間
新しいT3ターミナルの運用開始、ターミナル間移動の可能性、そして依然として高い旅客数を考慮すると、空港には時間に十分な余裕を持って到着することが強く推奨されます。
- 国内線出発の場合: 特に初めてT3を利用する場合や、利用ターミナルが不確かな可能性がある場合(例:ベトジェットエア)、チェックインや手荷物預け入れ、保安検査の時間を考慮し、出発時刻の少なくとも2時間前、可能であれば2時間半前には空港に到着するように計画するのが賢明です。オンラインチェックインを済ませている場合でも、予期せぬ混雑や移動に備え、余裕を持つことが重要です。
- 国際線出発の場合: T2からの出発となりますが、空港全体の混雑の影響を受ける可能性はあります。従来通り、出発時刻の少なくとも3時間前には空港に到着することが推奨されます。
乗り継ぎに必要な最低時間(Minimum Connection Time, MCT)については、利用する航空会社や乗り継ぎパターンによって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。これはあくまで目安であり、実際の状況(混雑、遅延、入国審査など)によって必要な時間は変動します。
- 国内線(T3到着)から 国内線(T3出発)へ(例:同一航空会社): 約80分。ターミナル内移動のみですが、広いターミナル内での移動やゲート変更の可能性を考慮。
- 国内線(T1到着)から 国内線(T3出発)へ(またはその逆): 約80分以上。ランドサイドシャトルバスでのターミナル間移動時間(渋滞考慮含む)、再度チェックインや保安検査が必要な場合を考慮。
- 国際線(T2到着)から 国内線(T3出発)へ: 約120分(2時間)から 170分(約3時間)。入国審査、税関検査、手荷物受取、ランドサイドシャトルバスでのT3への移動、国内線チェックイン、保安検査の時間を含むため、最も時間が必要です。
- 国内線(T3到着)から 国際線(T2出発)へ: 約120分(2時間)以上。T3での手荷物受取(必要な場合)、ランドサイドシャトルバスでのT2への移動、国際線チェックイン、出国審査、保安検査の時間を含む。
これらの目安時間よりも短い乗り継ぎ時間の航空券も販売されている場合がありますが、リスクを避けるためには、できるだけ乗り継ぎ時間に余裕のあるフライトを選択することが望ましいです。また、航空会社のウェブサイトやモバイルアプリ、空港に設置されているセルフチェックイン機(KIOSK)を利用して事前にオンラインチェックインを済ませておくことは、空港での手続き時間を短縮する上で非常に有効です。
第3ターミナルへのアクセス方法
新しく開設されたT3ターミナルへアクセスするための車両ルートは、既存のT1・T2へのアクセスルートとは一部異なります。ホーチミン市内の出発地に応じて、主に以下のルートが想定されています。
- ホーチミン市中心部(1区など)から: Nam Ky Khoi Nghia 通りを北上 → Nguyen Van Troi 通り → Hoang Van Thu 公園ロータリー → Tran Quoc Hoan 通り → T3ターミナル専用アクセス道路へ。
- ホーチミン市東部(旧2区、9区、トゥードゥック市など)から: Pham Van Dong 大通りを西進 → Truong Son 通り(T1・T2方面)へ向かわず、手前の分岐またはロータリーで Tran Quoc Hoan 通り方面へ → T3ターミナル専用アクセス道路へ。
- ホーチミン市西部・南部(タンフー区、ビンタン区、7区など)から: Cong Hoa 通りを東進 → Tran Quoc Hoan 通り、またはその手前で接続するHoang Hoa Tham 通りの延長部(計画中の18E通りなどを含む可能性)を経由 → T3ターミナル専用アクセス道路へ。
これらのルートは、T3へのアクセスを円滑にするために新たに整備された道路や分岐を含みます。タクシーや配車アプリ(Grabなど)のドライバーは、通常これらの新しいルートを把握していますが、念のため乗車時に「ターミナル3(T3)へ」と明確に伝えることが重要です。配車アプリを利用する際は、目的地として必ず正しいターミナル(T1, T2, または T3)を選択してください。
T3への主な交通手段としては、以下のものが利用可能です。
- タクシー、配車アプリ車両: 最も一般的なアクセス方法です。メーター制タクシー(Mai Linh、Vinasunなど信頼できる会社を選ぶ)またはGrabなどの配車アプリを利用します。直接T3の出発階または到着階へアクセスできます。
- 公共バス: ホーチミン市内と空港を結ぶいくつかの公共バス路線があります。例えば、109番バス(サイゴンバスステーション発)、152番バス(チュンソン住宅地方向)、72-1番バス(ブンタウ行き)、103番バス(チョロンバスターミナル発)などが空港に乗り入れています。これらのバスのうち、特に109番バスなどがT3近くにも停車するようにルート変更または延伸された可能性がありますが、最新の路線図や停留所情報を事前に確認することが必要です。バスは最も安価な交通手段ですが、時間がかかる場合があります。
- 無料ランドサイドシャトルバス: もし誤ってT1やT2に到着してしまった場合や、T1/T2を経由してT3へ移動する必要がある場合に利用できます。各ターミナルの指定された乗降場所から乗車します。
- 自家用車・バイク: T3に隣接して建設された立体駐車場を利用できます。駐車料金は時間や日数に応じて発生します。
どの交通手段を選択する場合でも、ホーチミン市内の交通渋滞は深刻な問題であり、特に朝夕のラッシュアワー(午前7時~9時頃、午後4時~7時頃)には移動に通常よりも大幅に時間がかかることがあります。空港へ向かう際は、これらの時間帯を避けるか、渋滞を考慮して最低でも30分~1時間の追加移動時間を見込んで、時間に十分な余裕を持って出発することが強く推奨されます。
第3ターミナル開設の意義と今後の展望
T3開設が空港運営に与える影響
第3ターミナル(T3)の開設は、タンソンニャット国際空港の運営体制と旅客体験に多大な、そして肯定的な影響を与えています。最も直接的かつ最大の効果は、長年にわたり空港運営の最大の課題であった深刻な混雑状況の大幅な緩和です。特に、これまで国内線旅客の大部分を処理し、設計容量をはるかに超える負荷がかかっていたT1ターミナルの混雑が軽減されることは、空港全体の円滑なオペレーションにとって極めて重要です。計画通りにベトナム航空とベトジェットエアの国内線の大部分がT3に移管された場合、T3はベトナム国内線旅客の約80%を取り扱うことになり、これによりT1の負荷が大幅に軽減され、チェックイン、保安検査、搭乗待合エリアなどでの混雑が緩和され、旅客フロー全体が改善されることが期待されます。
T3の稼働により、タンソンニャット国際空港全体の年間旅客処理能力が約3,000万人から約5,000万人へと大幅に増強されたことも、重要な影響の一つです。これにより、ベトナム経済の成長に伴って増加し続ける現在の航空需要に対応するだけでなく、今後数年間の需要増加にも備えることができるようになりました。これは、ベトナム南部の経済活動と観光産業の発展を支える上で不可欠なインフラ強化と言えます。
さらに、T3には顔認証システム(VNeID連携)や多数のセルフサービス機器(KIOSK、SBD)など、最新の技術が導入されています。これらの技術は、旅客の手続き時間を短縮し、利便性を向上させるとともに、空港運営の効率化、セキュリティ強化、そしてペーパーレス化といった現代的な空港運営の目標達成に貢献する可能性があります。これらの技術が効果的に活用されれば、旅客体験の質的な向上が期待できます。
一方で、ターミナルがT1、T2、T3の3つに物理的に分散したことにより、ターミナル間の旅客移動の管理という新たな運営上の課題も生じています。特に、乗り継ぎ旅客や、ターミナルを間違えた旅客がスムーズに移動できるような仕組みが必要です。これに対しては、エアサイド(T3→T1片道)とランドサイド(T1-T2-T3循環)の2種類の無料シャトルバスサービスが対応策として導入されました。これらのシャトルバスサービスの安定的な運行、運行状況に関するリアルタイムな情報提供、そして旅客への分かりやすい案内表示などが、今後の空港運営において、旅客満足度を維持・向上させるための重要な要素となります。
ロンタイン国際空港計画との関連性
タンソンニャット国際空港におけるT3ターミナルの整備と機能強化は、単独のプロジェクトとしてだけでなく、ベトナム南部全体の航空輸送能力を抜本的に強化するための、より大きな国家戦略の一部として捉えることが重要です。現在、ホーチミン市に隣接するドンナイ省では、新たな大規模国際ハブ空港となるロンタイン国際空港(Long Thanh International Airport)の建設が国家プロジェクトとして進められています。ロンタイン国際空港は、最終的には年間1億人の旅客と500万トンの貨物を取り扱う能力を持つ、東南アジア最大級の空港となる計画であり、その第1フェーズ(年間旅客処理能力2,500万人)の開業が2026年前半に予定されています。
ベトナム政府の計画では、将来的にロンタイン国際空港がベトナム南部の主要な国際線拠点としての役割を担うことになっています。つまり、現在タンソンニャット空港(T2)が担っている国際線の大部分が、ロンタイン空港に移管される見込みです。この将来的な役割分担を見据えた上で、タンソンニャット国際空港は、今回T3が開業し国内線処理能力が大幅に強化されたことを受け、ロンタイン空港開業後は国内線を中心とする空港へとその役割をシフトしていくことが想定されています。言い換えれば、T3の建設は、タンソンニャット空港が将来の「国内線ハブ」としての役割を効率的に果たせるようにするための重要な布石であり、ホーチミン市首都圏におけるデュアル・エアポート・システム(2空港体制)の実現に向けた具体的なステップの一部なのです。ロンタイン空港が国際線を、タンソンニャット空港が国内線(および一部の近距離国際線や特定路線)を主に担うことで、両空港が連携し、ベトナム南部全体の航空輸送需要に効果的に応えていく体制を目指しています。
全体のまとめ
タンソンニャット国際空港における第3ターミナル(T3)の開業と、それに伴う新しいターミナル間シャトルバスサービスの導入は、同空港の歴史において大きな変革期を象徴する出来事です。この大規模な拡張により、長年の懸案であった空港の慢性的な混雑問題、特に国内線ターミナルの混雑が大幅に緩和され、今後も増大が見込まれるベトナムの航空需要に対応するための基盤が強化されました。最新技術の導入による手続きの効率化や、旅客アメニティの向上も期待されます。
しかし、この変化は同時に、空港利用者に対して新たな注意点を提示しています。ターミナル機能がT1、T2、T3の3つに分散したことにより、利用者は搭乗前に自身の利用ターミナルを正確に確認することが、これまで以上に不可欠となりました。特に、航空会社や路線によって利用ターミナルが異なる場合があるため、事前の確認を怠ると、ターミナル間移動に時間を取られ、最悪の場合フライトに乗り遅れるリスクも生じます。導入された無料シャトルバスは便利な移動手段ですが、特にランドサイドシャトルは交通渋滞の影響を受ける可能性があるため、空港での移動や手続きには十分な時間を確保することが、スムーズな旅行のための鍵となります。
空港当局、航空会社、そして関連機関による、利用ターミナルやシャトルバスに関する明確でタイムリーな情報提供と、効率的で信頼性の高いシャトルバスの運行が、この移行期間における旅客の混乱を最小限に抑え、利便性を確保するために極めて重要です。これらの開発は、ダイナミックに成長を続けるベトナムの航空セクターを力強く支え、将来的には、ホーチミン市を訪れる、あるいは経由する全ての旅客に対して、より快適で効率的な空の旅を提供することを目指しています。T3の本格稼働と、将来のロンタイン国際空港との連携により、ベトナム南部の空の玄関口は、新たな時代へと歩みを進めています。